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松沢大樹

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松澤大樹 松

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

1. ブレインイメージングへの招待
「脳とこころの科学」より 松澤大樹


 この10年間に、脳についての研究は急速な発展を遂げました。その大きなり理由として、今までブラックボックスの域を出なかった、生きている人の脳のかたちや働きを、脳を傷つけることなく、また人体にまったく悪影響を及ぼすことなく「見る」方法が、コンピュータ断層装置の開発によって、実現したからです。
 生きている人の脳の機能を画像にすることができるようになったため、見たり、聞いたり、話したり、手を動かしたりするとき、脳のどこが働くかを知ることが可能になりました。さらに、記憶したり、手を動かしたりするとき、脳のどこが働くかを知ることが可能になりました。さらに、記憶したり、学習したり、考えたり、工夫したり、音楽を聴いて楽しんだりするとき、どこが働くかも見ることができます。反対に言葉が話せなくなったり、字が書けなくなったり、急に計算ができなくなったりするのはなぜかということも、同じ方法で知ることができるのです。
 この方法をブレインマッピング(Human Brain Mapping)、またはブレインイメージング(Human Brain Imaging)と呼んでいます。この技術をもとに発展する脳科学をイメージング脳科学といいます。イメージング脳科学の特徴は何といっても、生きている人の脳のかたちや働きを3種のコンピュータ映像法を単独またはコンビネーションにより使用し、時間の経過を追って画像として見ることができることです。
 脳の研究では原因と結果がしばしばあべこべになることがあります。
 例えば従来、大脳皮質が萎縮すると痴呆になると常識のように信じられてきたことが、PET(ポジトロン断層装置)とMRI(磁気共鳴装置)のコンビネーションにより、これはまったく反対であり、痴呆になった結果、大脳皮質が萎縮することが明らかとなりました(詳しくは「目で見る脳とこころ」第4章参照)。
 また、内因性精神病といわれ、どこにも身体的異常がないと考えられてきた統合失調症(精神分裂病)やうつ病で、MRI撮影法の工夫により、死体解剖では見逃されてしまう特徴ある破壊像が脳の重要な場所である扁桃体(扁桃)というところに見られることがわかってきました。これらはいずれも生きた脳でなければ見ることができないものです。
 本書(「目で見る脳とこころ」)は、ブレインイメージングの世界に読者を誘うために書かれたものです。脳とこころについては、現在さまざなな説があり、科学として収斂し、一定の結論に至るまでには、まだ相当の時間が必要でしょう。本書には7名の執筆者が参加していますが、それぞれの立場によって、少しずつ考えが異なっていることもご理解いただきたいと思います。執筆者の意見が違っているのは、主としてこころに関する考え方です。
 新しい工夫によって「こころの脳」の実体をイメージすることにより、精神障害がこころの脳の崩壊によって生じていることをとらえたのはまさにこころの科学の成果といえます。読者にはこころの対象が心理学や哲学から、画像を通じて脳科学にどのように移行したか、また科学の対象となったこころがどのような力を持つに至ったかを読みとっていただければ幸いです。また現在、どこまで脳とこころが見えてきたのかを画像を通じて理解され、興味とともに多くの疑問を持っていただき、それがひいては人間の科学のさらなる発展へとつながっていくことを期待しています。本書ははからずもこころの科学の幕開けを担うことになりました。
 なお、この本の出版は、患者のみなさんを始め、多くの方々のご協力がなくては実現しませんでした。改めて、感謝いたします。